忘れたくない事柄を思いついた時に

8/09/2006

Water (2005) Directed by Deepa Mehta




1930年代、舞台はイギリスによる植民地支配下で独立運動が活発化するインド。 作品はガンジス河沿いのバラナシという土地の寺に、ひっそりと肩を寄せ合って住む未亡人の女達を描いた物語。結婚後間もなく夫が病で亡くなり若干9歳で未亡人となってしまったチューヤという少女が、その古いしきたりの意味も知らずに、この寺に連れてこられることから始まる。ヒンドゥ教典によると、インドの女性達は夫の死後、どのように生きるかに選択肢が3つあるらしい。ひとつは、夫の弟と再婚。二つめは、夫の火葬の際に自殺すること。三つ目は、人里離れた場所で同じ境遇の女達と共に生涯独身で暮らしていくこと。何の説明もなく父親に置き去りにされた少女は、いつか母親が自分を迎えに来ると信じてそこでの生活を始める。そしてここに暮らす女達の生活を少しずつ目の当たりにしていくのである。

バラナシはヒンドゥー教徒にとって最大の聖地であり、死後ここで焼かれてガンガーに流されれば、現世の罪は洗い流され、輪廻の苦しみから抜け出すことができると信じられているそうである。つまりここは人生を終える土地、「死」を間近に迎える者達が最終的に目指す土地なのだ。そんな土地で人目をはばかりながら一生ひっそりと暮らすことを余儀なくされた女性達。一目で未亡人とわかる白い布をまとった姿が哀しい。

私はとりたててフェミニストだとは思っていないし、物事を性別で判断するつもりも毛頭ないのだが、女性の監督作品にはいつも興味がある。特にこうした女性達が主人公となる作品は、女性監督だからこそ成立する部分もあると思う。変わりつつあるとはいえ、まだまだ女性性が「弱者」である文化においてはなおのこと、「弱者」の視点を表現できるのはその立場にある者の特権なのだと思う。IMDbによるとこの作品は、撮影から完成、公開までに長い道のりを経てきたらしい。インドで行われた撮影は、ヒンドゥ原理主義グループの反対デモや脅しにあい撮影中断を余儀なくされた。4年後に再開した時はスリランカで、しかも注目を浴びないように映画のタイトルまでをも偽って撮影しなければならなかったらしい。この作品は Deepa Mehta 監督の3部作の最後のシリーズらしいので、他の「Fire」、「Earth」もチャンスがあったら是非観てみたいと思う。

情景といい、全体的な色味といい、とにかく美しい作品だった。とくに若い恋人達が人目を忍んで会うシーンのロケーションとそこにある大木が素晴らしい。美しい未亡人カラヤニに恋する男性、ナラヤン役の John Abraham が、なぜかあの「冬ソナ」の ペ・ヨンジュンとダブってしまったのが残念だった。(いやこれは完全に私の個人的な問題です。多分彼の眼鏡のせいでしょう。)



8/07/2006

やっぱり不思議な街、NY


*MTVのBeavis & Butt-Head

NYに住み始めて今年で16年。その間、ありとあらゆる人種を見てきたので、多少のことには驚かなくなりましたが、それでもたま〜に「?」と感じることがあります。

最近の例で言うと、ヨガのインストラクター。男性なのですが、スタジオに入ってきた時、耳の後方に何か白いものが・・・。何だろう、あれ・・・。あ〜、白いお花をさしてたんですね。ふ〜ん。花ね。で、彼はセッション中お花をさした自分を鏡で見ながらポーズをとっていたということなんですけどね。

せっかくヨガで気持ちも身体もリフレッシュしたことだし、帰りは何か身体に優しそうなものを食べて帰ろう!と寄ったマクロビオティックのジャパニーズ・レストラン。オーダーもすませて本を読んでいたところ、私の視界にスケート・ボードが置かれました。ふと顔を上げてみると、隣の席には若い男性が二人、ちょうど今席についたところです。この二人、一人はガンズのアクセル・ローズのようないでたちでブルーのバンダナを頭に巻いて、クビもとには一体何本のネックレスかけてんの?くらいたくさんジャラジャラついています。で、もう一人はちょうど私の真横に座っているのであまりジロジロと見ることができなかったのですが、黒のロック系Tシャツに鼻ピアス&やはりクビもと腕周りジャラジャラ系。極めつけが話し方。二人の顔を見てないと、まるで Beavis & Butt-Head がしゃべってるみたいなんです。なんとも言えず、ゆるーい感じ。

ここは、前にも書いたとおりのヘルシー系レストラン。他のお客さんはどちらかというともう少し年配の男女だったり、おしゃれなゲイ・グループだったりするので、この二人、思いっきり浮いてるワケですね。

ところが見かけとは裏腹に、彼らこの店によく来ているらしく、メニューに詳しい。そして、豆腐好き。しかも盛りつけにもいちいちコメントしている。そして一言。「あ〜、ホントここに来ると落ち着くな・・・」

こうやって「やっぱりNYって色んな人がいるわ」と時折再認識しています。

8/05/2006

My Blueberry Nights

日本もかなり暑くなっているようですが、今週のNYは熱波に見舞われ、体感温度が40℃ちかくまで上がり、外はまるでホット・ヨガ・スタジオ状態でした。

昨日くらいから猛暑も小休止し、夜はいい感じの風が吹いていました。お仕事関係のお食事会に参加した帰り道、外が気持ちいいので、帰る方向が同じ友人と共にお散歩がてら歩いて帰ることに。途中でその友人とも別れ、そこからさらに南下していく私。

家まであと10分くらいというところまで来て、信号待ちでふと通りを見ると、「あ、撮影やってる」。なんとなくいつもの癖でスタッフの中に知人はいないかと見ていると・・・いた。Lost in Translation で一緒だった録音技師 Drew がヘッドフォンをしてそこに立っています。

Drew は定住所を持ちません。一年中ほぼ休みなく次々と作品に参加しているため、家があっても帰れないからだそうです。最後に会ったのも2年前、ちょうど彼がトロントで参加していた Brokeback Mountain が終わり、次に始まる Broken Flowers に参加するために NYに来た時に街でばったり会ったくらいですから、今を逃したら今度はいつ会えるかわからない人なのです。

撮影の合間を見計らって声をかけ、久々の再会を果たし、さらに嬉しいことに 「Lost in ~ 」で一緒だった彼のアシスタントの女性とも会うことができて楽しいひとときでした。

・・・で本番です。Drew の横でモニターを観ていると、二人の男が道の向こうから走ってきます。カメラ前の2ショット。「あれれ、これって・・・ Jude Law じゃない!?」よく考えてみたら今これは何の撮影なのか聞いてなかった。でカットがかかった後、「これ誰の作品?」と訪ねたら、「ウォン・カーウァイって監督知ってる?」「知ってる、知ってる」「彼の作品だよ」「え〜っ!監督どこにいるの?」・・・でよくよくカメラ横を見てみると、いました。夜なのにサングラスをしている背の高いアジア人が。

後から聞いてみると、「My Blueberry Nights」というタイトルの
ウォン・カーウァイの新作だったそうです。噂通り、台本は一切渡されず、現場でサイズ(その日撮影予定部分の台本)をもらうのみなので、参加してるスタッフも「実はどんなストーリーなのかわからないんだ」と笑っていました。

これでまた劇場公開が楽しみな作品が増えました。