

1930年代、舞台はイギリスによる植民地支配下で独立運動が活発化するインド。 作品はガンジス河沿いのバラナシという土地の寺に、ひっそりと肩を寄せ合って住む未亡人の女達を描いた物語。結婚後間もなく夫が病で亡くなり若干9歳で未亡人となってしまったチューヤという少女が、その古いしきたりの意味も知らずに、この寺に連れてこられることから始まる。ヒンドゥ教典によると、インドの女性達は夫の死後、どのように生きるかに選択肢が3つあるらしい。ひとつは、夫の弟と再婚。二つめは、夫の火葬の際に自殺すること。三つ目は、人里離れた場所で同じ境遇の女達と共に生涯独身で暮らしていくこと。何の説明もなく父親に置き去りにされた少女は、いつか母親が自分を迎えに来ると信じてそこでの生活を始める。そしてここに暮らす女達の生活を少しずつ目の当たりにしていくのである。
バラナシはヒンドゥー教徒にとって最大の聖地であり、死後ここで焼かれてガンガーに流されれば、現世の罪は洗い流され、輪廻の苦しみから抜け出すことができると信じられているそうである。つまりここは人生を終える土地、「死」を間近に迎える者達が最終的に目指す土地なのだ。そんな土地で人目をはばかりながら一生ひっそりと暮らすことを余儀なくされた女性達。一目で未亡人とわかる白い布をまとった姿が哀しい。
私はとりたててフェミニストだとは思っていないし、物事を性別で判断するつもりも毛頭ないのだが、女性の監督作品にはいつも興味がある。特にこうした女性達が主人公となる作品は、女性監督だからこそ成立する部分もあると思う。変わりつつあるとはいえ、まだまだ女性性が「弱者」である文化においてはなおのこと、「弱者」の視点を表現できるのはその立場にある者の特権なのだと思う。IMDbによるとこの作品は、撮影から完成、公開までに長い道のりを経てきたらしい。インドで行われた撮影は、ヒンドゥ原理主義グループの反対デモや脅しにあい撮影中断を余儀なくされた。4年後に再開した時はスリランカで、しかも注目を浴びないように映画のタイトルまでをも偽って撮影しなければならなかったらしい。この作品は Deepa Mehta 監督の3部作の最後のシリーズらしいので、他の「Fire」、「Earth」もチャンスがあったら是非観てみたいと思う。
情景といい、全体的な色味といい、とにかく美しい作品だった。とくに若い恋人達が人目を忍んで会うシーンのロケーションとそこにある大木が素晴らしい。美しい未亡人カラヤニに恋する男性、ナラヤン役の John Abraham が、なぜかあの「冬ソナ」の ペ・ヨンジュンとダブってしまったのが残念だった。(いやこれは完全に私の個人的な問題です。多分彼の眼鏡のせいでしょう。)







